リーン・バリュー・ツリー(LVT)
企業にも個人にも「ありたい姿」がある。だが、願いや努力だけでは戦略にはならない。リーン・バリュー・ツリー(Lean Value Tree: LVT)は、そのビジョンを実現可能な形に落とし込み、意思決定と投資を一貫して導く仕組みである。ThoughtWorks社の著書『EDGE』『Enterprise Agility』で紹介されたこの考え方は、単なる計画手法ではなく、学習と適応を中心に据えた経営モデルである。
1. LVTの構造
LVTは「Vision(ビジョン)→ Goals(ゴール)→ Bets(ベット)→ Initiatives(イニシアチブ)」という階層で構成される。
- ビジョン:組織が向かうべき姿、理想像、方向性
- ゴール:ビジョンを実現する領域(1〜3年は安定しているもの)
- ベット:価値を生むと信じている仮説、「どの仮説に賭けるか?」
- イニシアチブ:仮説を検証する具体的な行動や実験
これらが一本の「ツリー」のように、すべての活動がビジョンへとつながる。ビジョンは変わりにくい「幹」であり、イニシアチブは伸ばしたり切ったりする柔軟な「枝」部分である。こうした構造が、安定と変化の両立を支える。
出典:Jim Highsmith, Linda Luu, David Robinson『EDGE: Value-Driven Digital Transformation』Addison-Wesley Professional
2. LVTの思想
LVTにおける最も重要な思想は、未来を「予測」ではなく「仮説」として扱うことである。計画は「予測したとおりに進む」ことを良しとするが、ベットは「外れる可能性があること」を前提にしている。この発想の転換が、変化の多い環境での適応力を生む。
Jim Highsmithは以下のように書いている。
複雑な世界では、計画どおりに進めば「予定どおりの成果物」はできるが、「本当に必要な成果物」にはならない。
LVTはこの現実を受け入れ、仮説を短いサイクルで検証しながら成長する「生きた戦略ツリー」を作る。従来の目標管理やKPIツリーと異なり、学習と適応を前提とした構造である。LVTは、組織全体が「顧客価値の向上」を軸に同じ方向へ進むための地図である。
3. LVTの運用
LVTの強みは、すべての活動が一本の構造でつながっていることにある。マネジメントは「ビジョン」や「ゴール」を、チームは「ベット」や「イニシアチブ」を担当する。それぞれの項目に所有者、目的、成功指標、関連項目を明示する。一枚の構造を全員が共有することで、意思決定が透明になり、チームが「何を優先すべきか」を自律的に判断できるようになる。
また、LVTは一度作って終わりではない。環境が変われば枝を剪定し、新しい枝を伸ばす必要がある。新しい「ゴール」は市場や顧客の変化、現場からのフィードバック、マネジメントの気づきなどから生まれる。それを組織で検討し、他の「ゴール」や「ベット」と比較しながらLVTに追加する。こうした反復的なプロセスが、戦略を現実と常に同期させるのである。
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